おとといスーパーのことを書きましたが、土曜(15日)の夜にNHKで、地方のスーパーを舞台にしたドキュメンタリー番組をやっていました。たまたま途中から見ただけなのですが……一体何県の話なのだろうと、それが知りたくて最後まで見てしまいました。なかなか味わい深い、いい番組でしたよ。
初め、出て来る人の言葉が九州っぽいので、あっちの方かなあ、ひょっとして奄美? などと想像を巡らせていました。バスの車体に「南日本」と書いてあるのがちらっと見えたので、鹿児島かなと思いました。ところが店員さんが話すのを聞くと、ほとんど標準語なのです。また分からなくなってしまいました。店の前でカップ酒をわびしく飲んでいるおじさんは、わずかに名古屋弁の形跡があります。聞けば、愛知県で働いていたけれど失業して故郷に戻ってきたそうです。ん?ここは和歌山か? そうではなさそうだし…はてな。
店に来るお客の服装を見ると、どうもコンニチ的ではない。この番組はひょっとして「アーカイブ何とか」で、30年ぐらい前の新日本紀行でも再放送しているのだろうか。ナレーションのまったりした感じがいかにもそれっぽい。何だかタイムスリップしたような妙な錯覚に陥りました。
服装がコンニチ的でなかったのは、単に田舎だからだったようです(失礼)。番組を見ていると、やはり現在の話でした。鹿児島県の阿久根市というところにある24時間営業の巨大スーパーが舞台だったのです。「にっぽんの現場」という番組です。
「A‐Z」という店。広い駐車場も備え、爪楊枝からなんと軽自動車まで売っているのです。業界の常識を打ち破って田舎に終夜営業の大型店を作り、大成功しているのです。この話は、テレビなどでも時々紹介されています。すでにご存知の方も案外多いのではないでしょうか。
しかし、ビジネス成功談がこの番組のテーマではありません。田舎に忽然と建つ不夜城のような店を通して、地元の人々の生活の断面をあぶり出しているのです。それが面白かったのです。
自転車で1時間かけ、家電売り場で半日テレビを見て過ごすお爺さん。
平日でも1万5千人が集まる。50年ぶりに再開し、驚きの声を掛け合う人も。
送迎バスで週一回の買い物を、子どもの時の遠足のように楽しみにしている独り暮しのお婆さん。
85歳・82歳・80歳・72歳の4姉妹は嫁いで別々に住んでいるが、買い物はいつも仲良く一緒。
夜間は若者ばかりかと思いきや、家族連れも多い。共働き家庭にとっては貴重な「一家団欒」のひととき。
隣町の工場で「研修」中の、中国からきた娘さん達。給料は月15万。その8割を仕送りしているという。食料はこの店で共同でまとめ買い。
ゴルフクラブを選ぶ女子高校生。趣味ではない。春から他県のゴルフ場に就職する。園芸科を出たけど、地元に就職先は見つからなかった。
子ども二人を育てるシングルマザーは深夜、明日の入園式のための子供服を探しに来た。
などなど、スーパーを訪れる人の話を積み重ねていくだけでも、現代の断面が見えてくるのですね。ほんわかした、そこそこの幸せも共有しつつ、高齢化、就職難、地方の低所得といった問題が現れています。地方の、それも県庁所在地ではない田舎で、じっと人々の暮らしを見つめて、初めて分かることも多いようです。