北陸のJR福井駅前で、ソースかつ丼のチェーン店に遭遇しました。ソースカツ丼は福井の名物の一つなのだそうです。この日は昼食をとった後だったので、店には入りませんでした。でも380円なら安いし、いつか話のたねに入ってみようかな。
最近は群馬、長野、福島など、ソースカツ丼が見直され、ちょっとしたブームにになっている感があります。珍しさもあるのでしょう。でも、田舎に行くとけっこう普通にありますよ。今主流になっている卵とじ和風味のカツ丼は、ソースカツ丼の後に出てきたもので、ひょっとしたらカツ丼の原型はソースカツ丼だったのではないでしょうか。
私が始めてソースカツ丼に出合ったのは、山梨県甲府市でした。20数年前です。山梨では、カツ丼とだけ言えばソースカツ丼のことを指します。卵とじタイプのは「煮カツ丼」といます。食堂で「カツ丼ちょうだい」と言うとソースカツ丼が出てきます。卵とじのが食べたければ、しっかり「煮カツ丼」といわないと出てきません。
カツ丼といえばソースカツ丼のことだと書きましたが、厳密にいうと違います。山梨のソースカツ丼にはソースはかかっていないのです。テーブルの上に置いてある普通のウスターソースを自分でかけるのです(すべての店がそうなのかどうかは知りません)。ソースがかかっていないのだから、ソースカツ丼とは言えず、ゆえに単に「カツ丼」というのかもしれませんね。
このカツ丼を初めて注文した時は、正直言って驚きました。丼のふたをとったら、ご飯の上にトンカツとキャベツの千切りがどんと乗っているだけでした。どうやって食べたらいいのかわかりませんでした。そこで、近くの席で食べているおじさんをこっそり観察しました。テーブルマナーを知らない人が高級レストランに行って、周りの動きをうかがっているのと同じです。
で、そのおじさんは平然と、丼のふたを皿代わりにし、その上にカツとキャベツを移し、そこにソースをかけて食べ始めたのです。「どこが丼やねん」。これでは「トンカツとライス」じゃないですか。
やっぱり「丼」として味わいたかった私は、カツとキャベツをご飯の上に乗せたまま、上からソースをかけて食べました。しかし、ご飯とブタの脂身と生のウスターソースの組み合わせは、私の口にはいささか合わず、残念ながら気持ち悪さだけが残りました。以来これがトラウマとなって、「ソースカツ丼」と聞くとちょっと引いてしまうのです。