きのうの話の続きです。
日本のネズミがフランスの三ツ星レストランを目指すのは、大仕事です。そのためには「和製レミー、海を渡る」というアニメに登場せねばなりません。豪華客船に紛れこんで密航する話です。怖い船員がほとんどな中、優しい船員もいたり、貴婦人の愛猫に追いかけ回されたり、船倉にひそむヘビと意外な交流があったり、ペリカンに助けられたり……大冒険をしなければなりません。
しかし! 全国のネズミ諸君、朗報です。
ミシュラン・ガイドの東京版が出来ることになりました。今年の11月発行で、すでに昨年から覆面調査が始まっているそうです。これで海を渡る危険をおかす必要は、なくなりましたよ。地方のネズミなら、宅配便のトラックや新幹線に忍び込めばいいだけです。
それはさておき、東京では「星」の獲得を狙って、すでに熾烈な陰謀が渦巻いています。自ら有望と思っているレストランの経営者は、車のタイヤを一斉に買い換えたそうです。コネの利きそうな政治家に、にわかに献金を始めた社長も現れました。電話でミシュランの関係者を名乗り、リストに載せてやると言って金をだましとる、振り込め詐欺も発生しています。
事態はエスカレートし、ついに昨夜、こんな事件が起こりました――。
都内のあるレストランに、黒い覆面をした3人組みが現れ、高級料理や酒、数十万円相当を飲み食いした挙句、「我々は、おフランスの調査員ざんす。代金はミシュランに請求してくれざんす」と言い残して足早に立ち去った。不審に思った店長がミシュランに問い合わせたところ、同社の調査員は黒い覆面ではなく、なんとあのブヨブヨのマスコット「ビバンダム」の、白いゴムの被り物をしていることが判明。110番したが時すでに遅く、警察が逃げた3人組みの行方を追っているという…。
そうか。ビバンダムのゴムマスクで覆面していれば、あわよくばタダ食いできるかも。きょうから高級レストランに行くときは、あれを被っていこう。